高度医療にもの申す

「高度医療機器」と「高度医療」

今はどうも高度医療って言葉がもてはやされる風潮がありますけど、僕に言わせると実(じつ)がないんですよ。一般の人は、CTやMRIとかいわゆる高度医療機器があると、その病院が高度医療を行っているかのように錯覚してしまいがちですよね。実際に「うちは高度医療をやってます」って謳っていたりするところもありますけど、そういうのが僕は気に入らなくて仕方ない。いくら高い機械があっても、人のアタマが動いてなかったら、それは高度医療でも何でもないんです。例えば、週に2日位しかその機械を動かしてなくて、一日数件の患者さんしか診てなくて、そんな状況で「うちは高度医療をやってます」って言うんなら「アホか(笑)」ですよね。高度医療は画像の中身をちゃんと読める人がいて、それを理解した上で治療できる人がいて、初めて成り立つ話。

川口動物医療センターがめざすのは高度医療ではなく、あくまでも一般診療。僕らは町医者です。でも、町医者は町医者でも、ある程度のモノは揃えなきゃいけないし、診断もできなきゃいけない、そういう状況が今の日本のこの業界にはあるんです。

動物医療の現実 町医者のジレンマ

ただ、町医者のスタンスというのが、この国では未だ確立されていない。理想は人間の医療と同じように、町医者がいて、総合病院があって、大学病院があって、その一方で臨床をバリバリやる専門医がいて…という形。そういう棲み分けができていたら、このケースはこちらにお願いしますとかできるんですけど、残念ながらできてない。本来なら大学病院に委ねるべきケースであっても、実際問題、臨床がスムーズに動いてないので、僕たち町医者が踏み込んでやっていくしかないんです。手術を申し込んだら「2カ月先です」って言われて、かと言ってその手術は僕達の領域じゃないからって避けてたら、その子達死んじゃいます。 だから本当はここからここまでを全うしたいという気持ちがあっても、要求によってはそれを越えて踏み込んでやらなきゃいけないことがあるんですね。それは僕達にとってすごいストレス。本当は棲み分けがきちんとできてこそ、それぞれの立場で仕事を全うできると思う。だからその棲み分けを一日も早く実現して、町医者が本来の仕事 を全うできるよう、専門医がいるASC(Animal Specialist Center)という二次診療病院をサポートして、少しでもこの状況を変えていこうという取り組みをしているんです。